ラブストーリーのオトナ絵本「しろいうさぎとくろいうさぎ」をレビュー
アンティークでかわいい海外発の絵本
この絵本は、写実的な絵を得意とするイラストレーターのG・ウィリアムズが描いた絵本です。彼の作品は、柔らかな動物の毛が特徴的で、この作品ではうさぎの毛が緻密かつ美しく描かれています。
表情豊かなうさぎの顔
写実的でリアル志向なテイストでありながらも、うさぎの表情はどこか人間くさくかわいらしいです。
白と黒の対比と黒うさぎの悩み
仲良しの白うさぎと黒うさぎは野原を駆けまわったりかくれんぼしたりして遊んでいます。しかし、時折黒うさぎが悲しげな表情をしてうつむいて、白うさぎに「どうしたの?」と聞かれても黒うさぎは「何でもない」と返します。ある時、黒うさぎは「ずっと一緒にいてくれる?」 と、突然白うさぎに向かって問います。そしてこれがプロポーズになって二匹は結ばれます。
温かくも優しいお話なのですが黒うさぎが何故時折悲しそうな表情をみせていたのか。これがお話を読む限り解明されていません。黒うさぎの悩みについて、掘り下げていきます。
美しくも悲しき白と黒
黒うさぎの悩みは物語中では語られていないのですが、絵でしっかりと描写されています。黒うさぎは白うさぎと遊ぶ最中でも黒い空や白い花、川の水面に映る黒うさぎである自分の姿、白うさぎ自身に目線があります。
この描写は黒うさぎが自分の色をコンプレックスに思っているという暗示なのではないかと思いました。黒い空は雨が降る予兆なので黒は悪い色とも言えます。 白い花は綺麗で美しくので黒うさぎは白いうさぎと重ね合わせて見つめていたのかもしれません。
黒うさぎは自分が黒であるがために、白うさぎに嫌われてしまうのでは無いかと思って、黒うさぎは白うさぎに「 ずっと一緒にいてくれる?」と聞いたのでしょう。
そして白うさぎは当たり前だと言わんばかりにもちろんだといって二匹は結婚しました。
白うさぎを特別に思うがために自分に自信がなくなってしまう黒うさぎの切ない恋心を絵から読み解くことができます。白色であるうさぎを特別に思っている裏付けとして、終盤に二匹が、結婚式を挙げている時に森の動物たちが見に来るのですが、その動物達はみんな黒い毛で覆われています。白い毛で覆われているうさぎに自分のような奴は似合わないのではないかという先入観が、黒うさぎにはあったのです。
自己肯定は大事なこと。
このように考えていくと、黒うさぎは考えすぎて、白うさぎが思ってもいないことを自分のダメなところとして決めつけていました。
しかし、ダメなところを口にしたらとても良い結末が待っていた。つまり、自己肯定が大事なのだということを示しているのかなと思いました。
黒うさぎの悩みを一緒に考える
正直、この絵本は未熟な学生の僕ではまだ完璧に理解できないくらい深いです。 しかし、黒うさぎが悲しそうにしているか踏まえて、子どもと一緒に黒うさぎが何故悩んでいたのかを考えるのもいいかもしれません。
(例)
ゆうこちゃんは黒いうさぎさんの悩みはなんだと思う?
本当は白うさぎさんとケンカしていて、そのことで悩んでいたんじゃない?
ゆうこちゃんはそう思ったんだね。 お母さんは黒うさぎさんは自分の毛の色が白うさぎさんみたいな白じゃなくて黒なのがいやだったんだと思うよ。
みたいな。
コンプレックスの正体を教えてくれる
この本が伝えたい子どもへのメッセージは、コンプレックスでの悩みは大したことではないということだと思いました。
大人へのメッセージは、一人で考え込むことがいかに危険なのかを伝えていると思いました。僕なりに考えた、黒うさぎの悩みは白うさぎにとっては大したことではありませんでした。吐き出すと楽になることもあります。
- 作者:ガース・ウイリアムズ
- 出版社/メーカー: 福音館書店
- 発売日: 1965/06/01
- メディア: 大型本