絵本ノート

大人のための絵本ブログ

食物連鎖の頂点はだれ? 「ボクは、なんにもならない」をレビュー


美術館の絵のような美しさ

この絵本の魅力はなんといっても、ビジュアルの美しさ。絵本内のワンシーンを部屋に飾りたいレベルです。

そんな「ボクは、なんにもならない」は、食べ物のイラストを中心に様々なモチーフを描く、進藤恵美子さんが絵を担当している作品です。

作は、里見喜久夫さん、訳は岩木貴子さんです。

食物連鎖の行き着く先

”草は牛の体になる。牛の体からは牛乳でる。牛乳はボクになる。ボクは何にもならない。ボクは何にもなれない。 ”

この絵本は食物連鎖の考え方を現代風にアレンジして描かれています。食物連鎖の仕組みをイメージする目的であれば、文章もとても簡単で、わかりやすいです。

しかし、この絵本のテーマはもっと深いところにあると僕は思います。

それは、この絵本のタイトルである、 「ぼくは、なんにもならない」 というこの一文の意味です。

この絵本の語り手は、自分は多くの命を営みを体内に取り入れているのに、自分はその営みの中に入らずにただ生きていることを嘆いているようです。

「ぼくは、なんにもならない」というこの一文は、とても考えさせられる一文だと思います。

自分が知らず知らずの内に、いかに多くの命に支えてられているのかを改めて思い知らされます。

命の終わりは命の始まり。美しき自然の摂理が、美しいビジュアルで表されています。

命の上に成り立ついのち

私たちが使う日本語に「いただきます」という日本語があります。いただきますの語源は、神様のお供え物や位の高い人から食べ物をもらう時に、「頂」(いただき)にかかげたことから、「もらう」の謙譲語として「いただく」を使うようになったことからですが、そんな「いただきます」には、2つの意味がありますよね。

一つ目は、料理を作ってくれた人絵の感謝です。そのほかにも、農家さんや漁師さんへの感謝もわすれてはなりません。

そして、二つ目は食材そのものへの感謝です。この作品のテーマでもあります。自分を生かしてもらっている食材となった命に感謝しながら美味しくご飯を味わうと、より美味しく感じるかもしれません。

「ぼくは、なんにもならない」だからダメなんだ。という繋ぎ方ではなくて、 「ぼくは、なんにもならない」だからこそ、自分も精一杯生きて、何かを成し遂げようというポジティブな繋げ方がこの絵本には、あっているのかもしれません。

食育で活用する、

この絵本は、子供への食育の活動に適していると思います。 この作品を読み聞かせた後に、いただきますを言わなくちゃならない理由や、食べることの素晴らしさについて話してみるのもいいかもしれません。

自分がいちばん大事

この作品が伝えたい子供へのメッセージは、普段食べているものは今まで生き抜いた命で、それを食して自分は生きているんだという、命の尊さ、大切さだと思います。

大人へのメッセージは、たくさんの命の上に成り立っている自分を、大切にしているのかということだと思いました。自分を大切にして命を全うすることが、僕たちにとって最も大切なことなのかもしれませんね。

ボクは、なんにもならない

ボクは、なんにもならない