こどもの心を掴む。ヨシタケシンスケの「ふまんがあります」をレビュー
イラストレーターが描く絵本
「ふまんがあります」はイラストレーターとして多岐にわたる分野で活動している、ヨシタケシンスケさん作・絵の絵本です。
くせになるイラスト
シンプルで素朴なイラストは、可愛らしさがありながらも、現代のミニマムなデザインに沿った親しみやすさも兼ね備えています。
サクサク読みやすく飽きがこない
ページ数が32ページと案外ボリュームがあります。しかし1ページあたりの文字数は少なくテンポも良いので読み聞かせで飽きられるようなことはないでしょう。
こどもの不満分かってますか?
こどもの共感が真っ直ぐに得ることができる絵本です。
登場人物はお父さんとその子ども。どうして私は〇〇しちゃダメって言われるのにパパは〇〇していいの?という子どもの疑問にお父さんは子どもにしか通じない嘘で説得していきます。
子どもの不満を巧くかわしていくお父さんには脱帽ですが、勘の良い子どもが多いご時世。お父さんの努力も絵本を見る子どもたちには滑稽に見えるかも知れません。大きくなると分かる親の嘘は誰にでもある経験なのではないでしょうか。
後半では、逆に父から子への逆襲パートがあります。子どもがギクッとしている場面のイラストは愛らしく、調子の良かったのが一変していて面白いです。
オチも相変わらず面白い。
子供目線の共感
ママ同士の女子会では、育児の疲れや子どものあれこれが大変だーなんて言っているかもしれませんが、子どもも不満は溜まるのです。自分の将来を案じる親の気持ちはつゆ知らず、大人とちがい、制限される自分の行動に不満はたまっているのです。
この絵本を読めば、共感することによって不満がへったり、物語内のお父さんの説得に納得したりする子もいるかもしれません。実際、女子は共感で男子は問題解決により、不満が解消されると言われています。子どもの不満が案外、解消される絵本なのかもしれません。
親と子の問題解決のツールに
物語に沿って、前半は子から親へ。後半は親から子へ不満をいいつつ、両者の妥協点をみつけるのがおすすめです。
(例)
ママは〇〇っていうテレビ番組を見ちゃダメっていうけど 私は〇〇っていうテレビ番組が見たいんだ。
私はゆうこちゃんにお手伝いがして欲しいんだ
だからゆうこちゃんは〇〇っていう番組を見ていい代わりに晩ごはん前はお手伝いしてね。
みたいな感じ。
論理的に生きよう。
この本が伝えたい子どもへのメッセージは疑問を持つことは悪いことでは無いんだという事。勇気を持って発言することで解決することは世の中にはたくさんあります。一歩踏み出して発言することの重要性を伝えたいメッセージとして捉えました。
大人へのメッセージは子供目線で物事を考えてあげれているのかという事。子供でなくとも人間は、理由がないと動けない生き物です。一つ一つの動作を当たり前にやるべきことだと思わずに、論理的に動いたり、説明ができなければならないということを教えてくれているのかもしれません。
- 作者: ヨシタケシンスケ
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2015/09/18
- メディア: 単行本
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