絵本ノート

大人のための絵本ブログ

おじいちゃんの小さかったとき・おばあちゃんの小さかったとき 50年代から60年代の子供の遊びや暮らしを昭和レトロなイラストで覗ける絵本【9/15発売】

50年代、60年代の子供の暮らしをのぞいてみよう。

「おじいちゃんやおばあちゃんは、小さい時に何をして遊んで、暮らしていたのだろうか。」デジタル世代の今だからこそ読ムベキ一冊。

令和時代に昭和時代を。がコンセプト

この絵本はそれぞれ1988年刊行の「父さんの小さかったとき」と「母さんの小さかったとき」の改訂版として出版されました。

父さん母さんがおじいちゃんおばあちゃんになった今、リメイクされて出版されるわけです。

昭和の遊びや生活は私を含めた現代っ子にはあまり慣れ親しまないものばかりです。

おじいちゃん、おばあちゃんはどのような生活をしていたのか。

この絵本には現代の日本の原点が詰まっています。

お孫さんに自身の体験を語りながら一緒に読むもよし。 親子で楽しく読むもよし。 一人でタイムスリップを楽しむもよしです。

数十年後、『ひいおじいちゃん、ひいおばあちゃんの小さかったとき』に再々リメイクされ、この絵本を読んだ子供たちが大人になり次の世代の子供達につなげていけたら面白いですね。

谷川俊太郎とNoritakeが描いた 戦争の絵本【へいわとせんそう】をレビュー

戦争ってなんだろう。戦争が遠い昔の出来事になってきている今、年を追うごとに薄くなりゆく戦争への意識を変えてくれる絵本です。

谷川俊太郎と新進気鋭のイラストレータNoritake(ノリタケ)がタッグを組んだ戦争の絵本「へいわとせんそう」を紹介します。

谷川俊太郎Noritakeノリタケ)のタッグ絵本

戦争経験者の谷川俊太郎とは

1931年 東京生まれの谷川俊太郎さんは言うまでもなく、日本を代表する詩人です。

1952年に第1作目の詩集を発表してから、1962年には「月火水木金土日の歌」で第4回日本レコード大賞作詞賞や近年では、「トロムコラージュ」で鮎川信夫賞など多くの作品で受賞しています。

作った詩の数は2500を超え、詩以外にも絵本、エッセイ、翻訳、脚本、作詞など多岐にわたる分野で活躍していて、

近年では、詩を釣るiOSアプリ「谷川」や詩を送る「ポエムメール」など詩の可能性を広げる試みを行っています。

人気イラストレータNoritakeノリタケ

シンプルなモノクロのドローイングを軸に広告や書籍、雑誌、ファッションなどにて国内外で活動しています。

デザインやデレクションも行い、Eテレで放送中の「デザインあ」の制作にも携わっています。

プロダクト制作も行なっていて、チャーミングな可愛い商品を数多く手がけています。

線に対するこだわりを持っており、使うのは主にサインペンと無でペンのみ。最低限の線で表現するミニマムなイラストを制作しています。

戦争と平和の対比

「へいわのボク」 「せんそうのボク」
「へいわのかぞく」「せんそうのかぞく」
「へいわのどうぐ」「せんそうのどうぐ」・・・

「戦争」を感じさせてくれる絵本

このように平和と戦争を対比させたこの作品は、見開きで平和と戦争を対比させて描かれています。

平和の描写では明るい表情なのに対して、戦争の描写では暗く険しい表情。 絵本の読みきかせする母と子に対して、子供を必死に守る母。 多様な人と建物に溢れた街に対して、壊れた建物と人々の屍が溢れる街・・・

戦争は私たちの何もかもを奪ってしまうことをこの絵本を読むことで改めて思い知らされます。自分の大切な人、もの、ことが何もかもなくなってしまうと考えるとゾッとします。

戦争は今もなお、この世のどこかで続いています。

戦争は過去の出来事ではありません。他人事ではなく、今の世を生きるもの同士として考えなければならないことがこの絵本を通じて伝わってくると思います。

今を生きる私たちに伝えたいこと

この絵本は戦争の悲惨さを伝えているだけではありません。

戦争の悲惨さと同時に今の生活の豊かさ、ありがたさも同時に伝えています。

今ある生活は当たり前のことじゃなく、暖かいご飯を食べて暖かい布団で寝ることができるのはありがたいことなんだ。

と、平和と戦争の対比によって感じることができます。

平和と戦争の両方に向き合えるのは「へいわとせんそう」を対比させたこの絵本ならではだと思います。

新しい「戦争絵本」【まとめ】

この作品の最後には

みかたのかお てきのかお

の細かい変わりのない二つの顔が登場します。

味方も敵も同じ人間。憎み憎まれぶつかり合っているのは私たちとなんら変わりない人間なんだと言うことを伝えたいのだと思います。

シンプルで現代的なデザインで書かれたこの絵本は私たちが忘れかけている大切なことを教えてくれます。

新しい形の戦争の絵本の「へいわとせんそう」。 是非、一度読んでみてください。

!POINT
・作者は日本を代表する詩人の谷川俊太郎さん
・絵はNoritakeさん
戦争と平和を対比させた絵本
・現代人に贈る新しい戦争の絵本

育児に疲れたママさんにおくる絵本を処方いたします。【ママが10にん⁉︎】

ママは、仕事や家事、ご近所付き合いにママ友とのコミュニケーションと、やらなくちゃならないことが多すぎて疲れてヘトヘト。

そんな中でも我が子はお構い無しでママにかまって攻撃してきますよね。

遊んでやりたいけれど、体が足りないし、時間も足りない。

そんなママさんに是非一度、我が子と一緒に読んでほしい、『ママが10にん⁉︎』を紹介します。

3児と1児のママさんが描いた妄想絵本。

3児の母で歌人の天野慶・作

1979年生まれで現に、3児のママである天野慶さんが描いた絵本。

彼女は言葉にならない思いを言葉にする、女性の現代歌人です。

昭和14年からの歴史を持つ短歌結社誌の「短歌人会」に所属。

短歌とイラストを融合させた表現に取り組み、NHKの短歌番組「NHK短歌」の制作にも携わりました。

高校生の時から、その才能を遺憾なく発揮し、俳句甲子園をはじめ高校生詩のコンクールなどの賞レースで受賞。

最近では、百人一首の魅力を伝えるべく多くのメディアでその魅力について発信しています。

一児の母で人気イラストレーターのはまのゆか・絵

自らもオリジナル絵本を出版しており、また国内外で漫画制作についての賞を受賞したりと多方面で活躍している彼女も天野慶さんと同じく1973年生まれ。

実は彼女、皆さんご存知の大ベストセラーでありミリオンセラーである「13歳のハローワーク」のイラストを担当しています。

2002年から個展を開いており、2017年からは3年連続で個展や原画展を開催しています。

子どもはお母さんと遊びたい!

ママと遊びたいのに「忙しいから」と構ってもらえないゆうくんは、

「またあとで」「まってて」と言われるばかりで悲しい様子。

「あーあ、ママが10人いたらいいのになあ。」

そう言いながらスケッチブックに描いた絵が、あれよあれよと飛び出してきてママが10人になっちゃいます。

ゆうくんは、甘えたり、遊んでもらったり、やりたいこと、やってほしいことを全部10人のままにやってもらいます・・・

ゆうくんはママが大好きで、

ママも「忙しい、またあとで」と言いながら本当はゆうくんが大好きです。

子どもはママが大好きだし、ママは子供が大好きなのです。

しかし、ママは仕事に下の子のお世話などでやることがいっぱい。

中々遊んであげることができません。

体がいくつあっても足りない、時間も足りない。やりたいこと、やってやりたいことは沢山あるのに……と思うでしょう。

時には、子どものかまって攻撃にイライラしてしまうこともあるでしょう。

この絵本では、子どもの純粋なママと遊びたいんだ!という気持ちと、 お母さんの本当は一緒に遊んであげたいんだという気待ちが切に表れていると思いました。

親子で寝る前のだんらんの時間に、この一冊を読んでお母さんの気持ちと子どもの気待ちを共有するのもいいかもしれませんね。

育児疲れのママさんに是非。【まとめ】

小さい子のお世話や、身の回りのことが手一杯の時期は子どもがかまってほしいのに、

子どもが思春期になったら、今度はお母さんの方が子どもにかまって欲しくなるという矛盾に 世の中って上手くできてないんだなって思いました。

・作者は歌人の天野慶さん
・絵は、はまのゆかさん
・子どもの遊んでほしいという気持ちと母親の忙しいけど本当は遊んであげたいという気持ちが表れた絵本

かべのむこうになにがある 小さなネズミが伝えたいことって?

皆さんは自分が今いる環境で満足していますか?

この絵本が皆さんに伝えたいこととは何か。

可愛い絵をして奥が深い、かべのむこうになにがあるをレビューしました。

世界三大絵本賞にノミネート経験のある作者!

作者はブリッタ・テッケントラップ

「かべのむこうになにがある」を描いた作者は、ブリッタ・テッケントラップさん。

1969年生まれ、ドイツのハンブルグ出身です。

100冊以上の絵本を出版し、25カ国で翻訳されて出版されている、人気絵本作家であり、 切り絵のようなイラストと温かみのある色彩が特徴です。

世界三大絵本賞と言われているケイト・グリーナウェイ賞のノミネートをはじめ、 ドイツ唯一の国営文学賞、ドイツ児童文学賞のノミネートや、世界的な年一度の絵本の見本市で行われる、ボローニャガッツィ賞の特別賞の受賞経験もあり、その他多くの賞も受賞している実力派です。

そして、「かべのむこうになにがある」で、2019年に青少年感想文全国コンクール5、6年生の課題図書になりました。

彼女の芸術作品は、ロンドンのギャラリーや世界中のアートフェアで頻繁に展示されています。

翻訳にも注目。

この本を翻訳したのは、風木 一人(かぜき かずひと)さんです。

この方は、翻訳家の一面がありながら絵本作家としての一面もあり、 アジアを中心に多数の作品を翻訳して出版しています。

疑問を抱くことに大きな価値がある。

大きな赤いかべの中に暮らす動物たち。 このかべの存在について者はいないし、もはや知ろうともしていませんでした。

しかし、知りたがりの小さなネズミはこのかべの向こう側には何があるのだろうと、疑問を抱きます。

色々な動物にこのかべの事について聞いて回りますが、どの動物もこのかべのことには無関心。 このかべは僕らを守っているんだ。 という動物もいます。

そんな中、青い鳥がやってきて小さなネズミを背中に乗せてかべの向こう側へ。

そこで小さなネズミが見たものとは… 小さなネズミは今まで当たり前だったはずの壁の中にいる環境に疑問を抱きます。

今ある生活に疑問を持つことは、自分のことを否定しているようで自分の脳内で考えることをストップしてしまいます。

そんな中で、

この かべのむこうに なにが あるんだろう

と、小さなネズミが抱いたこの疑問によって、彼は大きな幸せを手に入れることになります。

なぜ?どうして?

子どもは色んなことが気になってお父さんやお母さんに聞いてきます。

その問いは、大人にとっては当たり前で知る意味もないと思うものばかりかもしれません。

でも、そんな当たり前と思う疑問こそ大切にしなければいけないのだと思うのです。

自分が今いる環境やいつもしている行動、発言に至るまで、生活のありとあらゆる様々なことに疑問を抱くことに大きな価値があるのだと思いました。

自分にとってのベストアンサーを見つけよう。【まとめ】

この絵本を読んだ後には、自分の生活環境における価値観が、ガラリと変わるかもしれません。

自分の中の疑問を解決して、自分の生活や人生をアップデートして、自分にとってのベストアンサー を見つけることが大切ののかな?なんて思ったり。

自分の今いる環境に満足だ。と思っている人にこそ読んでほしいです。

カラフルな色彩と切り絵のような可愛いおしゃれなイラストが特徴。

ブリッタ・テッケントラップがあなたにおくる『かべのむこうになにがある』

ぜひ読んでみてください。

食物連鎖の頂点はだれ? 「ボクは、なんにもならない」をレビュー

美術館の絵のような美しさ

この絵本の魅力はなんといっても、ビジュアルの美しさ。絵本内のワンシーンを部屋に飾りたいレベルです。

そんな「ボクは、なんにもならない」は、食べ物のイラストを中心に様々なモチーフを描く、進藤恵美子さんが絵を担当している作品です。

作は、里見喜久夫さん、訳は岩木貴子さんです。

食物連鎖の行き着く先

”草は牛の体になる。牛の体からは牛乳でる。牛乳はボクになる。ボクは何にもならない。ボクは何にもなれない。 ”

この絵本は食物連鎖の考え方を現代風にアレンジして描かれています。食物連鎖の仕組みをイメージする目的であれば、文章もとても簡単で、わかりやすいです。

しかし、この絵本のテーマはもっと深いところにあると僕は思います。

それは、この絵本のタイトルである、 「ぼくは、なんにもならない」 というこの一文の意味です。

この絵本の語り手は、自分は多くの命を営みを体内に取り入れているのに、自分はその営みの中に入らずにただ生きていることを嘆いているようです。

「ぼくは、なんにもならない」というこの一文は、とても考えさせられる一文だと思います。

自分が知らず知らずの内に、いかに多くの命に支えてられているのかを改めて思い知らされます。

命の終わりは命の始まり。美しき自然の摂理が、美しいビジュアルで表されています。

命の上に成り立ついのち

私たちが使う日本語に「いただきます」という日本語があります。いただきますの語源は、神様のお供え物や位の高い人から食べ物をもらう時に、「頂」(いただき)にかかげたことから、「もらう」の謙譲語として「いただく」を使うようになったことからですが、そんな「いただきます」には、2つの意味がありますよね。

一つ目は、料理を作ってくれた人絵の感謝です。そのほかにも、農家さんや漁師さんへの感謝もわすれてはなりません。

そして、二つ目は食材そのものへの感謝です。この作品のテーマでもあります。自分を生かしてもらっている食材となった命に感謝しながら美味しくご飯を味わうと、より美味しく感じるかもしれません。

「ぼくは、なんにもならない」だからダメなんだ。という繋ぎ方ではなくて、 「ぼくは、なんにもならない」だからこそ、自分も精一杯生きて、何かを成し遂げようというポジティブな繋げ方がこの絵本には、あっているのかもしれません。

食育で活用する、

この絵本は、子供への食育の活動に適していると思います。 この作品を読み聞かせた後に、いただきますを言わなくちゃならない理由や、食べることの素晴らしさについて話してみるのもいいかもしれません。

自分がいちばん大事

この作品が伝えたい子供へのメッセージは、普段食べているものは今まで生き抜いた命で、それを食して自分は生きているんだという、命の尊さ、大切さだと思います。

大人へのメッセージは、たくさんの命の上に成り立っている自分を、大切にしているのかということだと思いました。自分を大切にして命を全うすることが、僕たちにとって最も大切なことなのかもしれませんね。

ボクは、なんにもならない

ボクは、なんにもならない

もったいない精神のアイデア絵本「ヨセフのだいじなコート」をレビュー

穴があいたコラージュ絵本

この本はアメリカ生まれで作家やグラフィックアーティストとして活躍していたシムズタバックによって描かれた絵本です。

水彩絵の具、グワッシュ、色鉛筆、インク、コラージュと様々な手法で描かれたこの絵本はカラフルで見ていて楽しい絵本です。絵本には穴があいていて、切り抜かれた形が、ヨセフのコートの移り変わりを見事に表現しています。は

コートが最後には〇〇に

ヨセフはつぎはぎだらけのコートを持っていました。そこでヨセフはコートをジャケットに仕立て直します。いつしかジャケットも古くなってきて次はチョッキに、次は何になるでしょう…? 最後には小さなボタンになってしまいます。

ヨセフのもったいない精神

ヨセフのコートは、最後にボタンになるまで使われ続けられました。これはヨセフのものを大切にする心が生み出した結末です。

江戸時代、日本はリサイクル社会でした。鎖国をしていて燃料の輸入が無い中で、国内のみの物質収支でまかなって約250年の間を過ごした持続可能な社会でした。

それも昔の話。ヨセフのもったいない精神は今の日本に失われつつあるものなのではないのでしょうか。

次は何に変身するかを考えて楽しむ

ヨセフが身につけている衣装が古くなって、次は何になるかをクイズしながら読み聞かせをするのも楽しいと思います。

現代のありふれたモノ達

この絵本は様々な表現の技法を使っていて、ごちゃごちゃしています。この絵のごちゃごちゃは現代社会のありふれたものを彷彿とさせます。

ヨセフのコートは周りの派手な装飾に比べて地味です。これは、有り触れた沢山のものがある中でも、ものを大切にしているもったいない精神を表現しているのではないでしょうか。

リメイクして再び使うよりも壊れたり、古くなったりしたら新しく買う方が、安くて手間もかからない世の中です。そん中でこの絵本では、ものを大切にすることがいかに素敵なことであるかが表現されています。

レジ袋の有料化やプラスチック製のストローの廃止と紙ストローの導入などで、身近にエコ気運が高まっている今だからこそ読むべき一冊です。

エコ活動と購買活動を考えよう

この本が伝えたい子どもへのメッセージは、ものを大切にしようということ。ものに名前を書くことを身につけることや丁寧にものを扱うことから始めてみるといいかもしれませんね。

大人へのメッセージは有り触れ過ぎたモノの中で暮らす現代社会の中で購買活動とエコ活動について一人ひとり考えることだと思いました。

ヨセフのだいじなコート (ほんやくえほん)

ヨセフのだいじなコート (ほんやくえほん)

ラブストーリーのオトナ絵本「しろいうさぎとくろいうさぎ」をレビュー

アンティークでかわいい海外発の絵本

この絵本は、写実的な絵を得意とするイラストレーターのG・ウィリアムズが描いた絵本です。彼の作品は、柔らかな動物の毛が特徴的で、この作品ではうさぎの毛が緻密かつ美しく描かれています。

表情豊かなうさぎの顔

写実的でリアル志向なテイストでありながらも、うさぎの表情はどこか人間くさくかわいらしいです。

白と黒の対比と黒うさぎの悩み

仲良しの白うさぎと黒うさぎは野原を駆けまわったりかくれんぼしたりして遊んでいます。しかし、時折黒うさぎが悲しげな表情をしてうつむいて、白うさぎに「どうしたの?」と聞かれても黒うさぎは「何でもない」と返します。ある時、黒うさぎは「ずっと一緒にいてくれる?」 と、突然白うさぎに向かって問います。そしてこれがプロポーズになって二匹は結ばれます。

温かくも優しいお話なのですが黒うさぎが何故時折悲しそうな表情をみせていたのか。これがお話を読む限り解明されていません。黒うさぎの悩みについて、掘り下げていきます。

美しくも悲しき白と黒

黒うさぎの悩みは物語中では語られていないのですが、絵でしっかりと描写されています。黒うさぎは白うさぎと遊ぶ最中でも黒い空や白い花、川の水面に映る黒うさぎである自分の姿、白うさぎ自身に目線があります。

この描写は黒うさぎが自分の色をコンプレックスに思っているという暗示なのではないかと思いました。黒い空は雨が降る予兆なので黒は悪い色とも言えます。 白い花は綺麗で美しくので黒うさぎは白いうさぎと重ね合わせて見つめていたのかもしれません。

黒うさぎは自分が黒であるがために、白うさぎに嫌われてしまうのでは無いかと思って、黒うさぎは白うさぎに「 ずっと一緒にいてくれる?」と聞いたのでしょう。

そして白うさぎは当たり前だと言わんばかりにもちろんだといって二匹は結婚しました。

白うさぎを特別に思うがために自分に自信がなくなってしまう黒うさぎの切ない恋心を絵から読み解くことができます。白色であるうさぎを特別に思っている裏付けとして、終盤に二匹が、結婚式を挙げている時に森の動物たちが見に来るのですが、その動物達はみんな黒い毛で覆われています。白い毛で覆われているうさぎに自分のような奴は似合わないのではないかという先入観が、黒うさぎにはあったのです。

自己肯定は大事なこと。

このように考えていくと、黒うさぎは考えすぎて、白うさぎが思ってもいないことを自分のダメなところとして決めつけていました。

しかし、ダメなところを口にしたらとても良い結末が待っていた。つまり、自己肯定が大事なのだということを示しているのかなと思いました。

黒うさぎの悩みを一緒に考える

正直、この絵本は未熟な学生の僕ではまだ完璧に理解できないくらい深いです。 しかし、黒うさぎが悲しそうにしているか踏まえて、子どもと一緒に黒うさぎが何故悩んでいたのかを考えるのもいいかもしれません。

(例)


ゆうこちゃんは黒いうさぎさんの悩みはなんだと思う?
相手名前ゆうこ・子
本当は白うさぎさんとケンカしていて、そのことで悩んでいたんじゃない?

ゆうこちゃんはそう思ったんだね。 お母さんは黒うさぎさんは自分の毛の色が白うさぎさんみたいな白じゃなくて黒なのがいやだったんだと思うよ。

みたいな。

コンプレックスの正体を教えてくれる

この本が伝えたい子どもへのメッセージは、コンプレックスでの悩みは大したことではないということだと思いました。

大人へのメッセージは、一人で考え込むことがいかに危険なのかを伝えていると思いました。僕なりに考えた、黒うさぎの悩みは白うさぎにとっては大したことではありませんでした。吐き出すと楽になることもあります。