谷川俊太郎とNoritakeが描いた 戦争の絵本【へいわとせんそう】をレビュー
戦争ってなんだろう。戦争が遠い昔の出来事になってきている今、年を追うごとに薄くなりゆく戦争への意識を変えてくれる絵本です。
谷川俊太郎と新進気鋭のイラストレーターNoritake(ノリタケ)がタッグを組んだ戦争の絵本「へいわとせんそう」を紹介します。
谷川俊太郎とNoritake(ノリタケ)のタッグ絵本
戦争経験者の谷川俊太郎とは
1931年 東京生まれの谷川俊太郎さんは言うまでもなく、日本を代表する詩人です。
1952年に第1作目の詩集を発表してから、1962年には「月火水木金土日の歌」で第4回日本レコード大賞作詞賞や近年では、「トロムコラージュ」で鮎川信夫賞など多くの作品で受賞しています。
作った詩の数は2500を超え、詩以外にも絵本、エッセイ、翻訳、脚本、作詞など多岐にわたる分野で活躍していて、
近年では、詩を釣るiOSアプリ「谷川」や詩を送る「ポエムメール」など詩の可能性を広げる試みを行っています。
人気イラストレーターNoritake(ノリタケ)
シンプルなモノクロのドローイングを軸に広告や書籍、雑誌、ファッションなどにて国内外で活動しています。
デザインやデレクションも行い、Eテレで放送中の「デザインあ」の制作にも携わっています。
プロダクト制作も行なっていて、チャーミングな可愛い商品を数多く手がけています。
線に対するこだわりを持っており、使うのは主にサインペンと無でペンのみ。最低限の線で表現するミニマムなイラストを制作しています。
戦争と平和の対比
「へいわのボク」 「せんそうのボク」
「へいわのかぞく」「せんそうのかぞく」
「へいわのどうぐ」「せんそうのどうぐ」・・・
「戦争」を感じさせてくれる絵本
このように平和と戦争を対比させたこの作品は、見開きで平和と戦争を対比させて描かれています。
平和の描写では明るい表情なのに対して、戦争の描写では暗く険しい表情。 絵本の読みきかせする母と子に対して、子供を必死に守る母。 多様な人と建物に溢れた街に対して、壊れた建物と人々の屍が溢れる街・・・
戦争は私たちの何もかもを奪ってしまうことをこの絵本を読むことで改めて思い知らされます。自分の大切な人、もの、ことが何もかもなくなってしまうと考えるとゾッとします。
戦争は今もなお、この世のどこかで続いています。
戦争は過去の出来事ではありません。他人事ではなく、今の世を生きるもの同士として考えなければならないことがこの絵本を通じて伝わってくると思います。
今を生きる私たちに伝えたいこと
この絵本は戦争の悲惨さを伝えているだけではありません。
戦争の悲惨さと同時に今の生活の豊かさ、ありがたさも同時に伝えています。
今ある生活は当たり前のことじゃなく、暖かいご飯を食べて暖かい布団で寝ることができるのはありがたいことなんだ。
と、平和と戦争の対比によって感じることができます。
平和と戦争の両方に向き合えるのは「へいわとせんそう」を対比させたこの絵本ならではだと思います。
新しい「戦争絵本」【まとめ】
この作品の最後には
みかたのかお てきのかお
の細かい変わりのない二つの顔が登場します。
味方も敵も同じ人間。憎み憎まれぶつかり合っているのは私たちとなんら変わりない人間なんだと言うことを伝えたいのだと思います。
シンプルで現代的なデザインで書かれたこの絵本は私たちが忘れかけている大切なことを教えてくれます。
新しい形の戦争の絵本の「へいわとせんそう」。 是非、一度読んでみてください。